これからの体育科教育はどうあるべきか
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出版年月:
ページ数:168
教科教育の現在と未来を考える羅針盤シリーズ、ついに刊行!
本書の概要
令和3年の中央教育審議会答申において、「個別最適な学び」と「協働的な学び」が提起され、これまで以上に「個に応じた指導」「探究学習」「ICT端末の活用」を推進することが目指されている。本書では次期学習指導要領を見据え、これまでの体育科の課題を整理するとともに、ICT端末を使った最先端の授業、領域間の関連、地域・学校段階間の接続を重視した新時代の体育の学びを提言する。
本書からわかること
体育科の「課題」を解決する!
■課題1:「学びに向かう力、人間性等」の指導と評価
学習指導要領において、「学びに向かう力、人間性等」の指導の目標は示されていますが、指導の内容まで明確に示されていない教科等がほとんどである一方、体育科運動領域においては、内容まで明確に示されています。このことから、体育は、運動を通して、学びに向かおうとする態度や豊かな人間性等を育むことをより顕著に表した教科であるということができます。
「学びに向かう力、人間性等」の指導と評価で最も留意すべきは、「運動の楽しさや喜びにつなげるため」にあるということです。「守らなければならない約束」「学習規律」とするではなく、「これらの態度を育成することでもっと運動が楽しくなる」「豊かなスポーツライフの基礎になる」という指導観が大切です。本書では、3つの資質・能力の指導と評価について、新旧のスポーツ庁調査官や学習指導要領の作成協力者が、丁寧に解説していきます。
■課題2:運動領域と保健領域との関連
運動領域と保健領域の関連を図る指導については、これまでも行われてきました。しかし、平成28年12月の中央教育審議会答申において、「小学校、中学校、高等学校すべてで、体育と保健の一層の関連を図った内容等について改善を図る」ことが明確に示され、小学校の学習指導要領(平成29年告示)において、より一層の関連が図られるようになりました。
しかし、どの単元で関連を図るのか、どのような順番で指導を行うのかなど、現場では戸惑いの声を聞こえてきます。大切なことは、保健の授業で学んだ内容を運動領域の授業で意識したり、運動領域で学んだ内容を保健の授業で振り返ったりすることなどを通して、それぞれの内容に対する学びの質が高まり、体育科としての学びを深めることになります。本書では、「体ほぐしの運動遊び」「体の発育・発達」「体の動きを高める運動」「心の健康」を中心とした4つの事例を紹介し、多くの先生の悩みに答えていきます。
新時代の体育の学びを提言する!
■提言1:ICT端末を活用した新たな体育の学び
体育授業でICT端末を用いることで、子供たちには、自分の実態を把握する「自己認識能力」、動きに関する情報や自己の課題解決に向けた取組に関する情報を集めることに関わる「情報収集力」、集めた情報を分析・統合して結論を導き出す「情報分析・統合力」、自分がどの解決策を選択すればよいのかを判断する「課題選択力」等が身に付くと言えます。ICT端末を用いることで、今の自分(たち)のことを「分かる」ことが、これまでとは比較にならないほど充実してできるようになりました。
本書では、運動領域、保健領域において「ICT端末を使うと効果的な場面と授業への活かし方のポイント」を解説するとともに、運動領域の低学年(マットを使った運動遊び)、中学年(ネット型ゲーム)、高学年(跳び箱運動)および保健領域(病気の予防)の実践を紹介します。どこで活用するかという「中心活動」と、ICT端末を活用した「評価」の具体が見えてきます。
■提言2:次期改訂を見据えた新たな体育の学び
次期学習指導要領の議論が始まろうとする中、体育科教育を牽引する研究者・実践者たちは、多くの実践を行ってきています。本書でも、①運動が苦手な子どもへの指導、②幼児期や中学校との連携を図った指導、③外部(研究者・学校医等)との連携を図った指導など、これからのミライを生きる子どもたちの学びを充実するための提言を行っています。また、現代的な課題である「心の教育」について、より一層の充実が求められる「インクルーシブ教育」との連携についても紹介します。
こんな先生におすすめ
体育科教育に力を入れている先生
体育科教育を究めたい先生・体育主任