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HSCがありのままで幸せになれる教室ー教師が知っておきたい「敏感な子」の悩みと個性ー

杉本 景子/著


読者対象:小学校教員・中学校教員

出版年月:

ページ数:144

「敏感な子」の個性を尊重し、よさを伸ばす指導とは?

本書の概要

約5人に1人いると言われているHSC(Highly Sensitive Child)。どのクラスにもいるはずの「敏感な子」に、おそらくすべての先生が接しています。しかし、その悩みや葛藤を理解して、適切な指導ができているとは限りません。他の子どもたちには効果的な声掛けや接し方がHSCには逆効果という場合もあります。また、HSCはクラスの雰囲気にも敏感なので、教師がSOSを見逃さずに対処することで、安定した学級経営にもつながるでしょう。多様性を尊重し、一人一人のよさを伸ばす指導が求められる今、すべての教師に必須となる知見が詰まった一冊です。

本書からわかること

まずは知っておきたいHSCの存在

1996年にアメリカのアーロン博士が提唱したHSP(Highly Sensitive Person)という概念。生まれつき敏感な気質をもった人を意味し、特に子どものことをHSC(Highly Sensitive Child)と呼びます。約5人に1人存在するので、どのクラスにもいると言えるでしょう。思慮深く、他人の気持ちに敏感で、ささいな変化に気が付き、慎重に行動するという特徴があります。
●HSP(HSC)の判断軸「DOES(ダズ)」
D=何事も深く考えて処理する
O=過剰に刺激を受けやすい(感覚面での不快感がつのりやすい)
E=感情の反応が強く、特に共感力が高い
S=ささいな刺激を察知する(観察力や察知力が高い)

クラスの「気になる子」がHSCという可能性も

HSCにとって学校生活は刺激が強く、緊張やプレッシャーを感じる場面も多いです。例えば、給食が食べられなかったり、トイレに行けなくなったり、急かされるとうまくできなくなったりすることもあります。そのような場面では、子どもが安心できるような声掛けが有効です。また、HSCはADHDやASDと誤解されるケースもあると言います。それらの行動が敏感さから生じているという可能性に気付かず、発達障害と結び付けてしまうことがあるのです。HSCに関する知識があれば、クラスの「気になる子」に対して、対応の仕方を考慮することもできるはずです。

HSCが安心できるクラスはみんなにとって居心地のよいクラス

HSCは、クラスの雰囲気や先生の態度などに対しても敏感です。先生がいつも怒鳴っていたり、クラスの秩序が乱れていたりすると、いち早く苦痛を感じるようになります。HSCは「炭鉱のカナリア」とも言えるでしょう。つまりクラスの雰囲気が悪くなっていることを知らせてくれる存在なのです。教師がそのSOSを見逃さずに指導に生かすことで、穏やかなクラスづくりにつなげることもできます。HSCが安心できるクラスは、みんなにとって居心地のよいクラスなのです。

自己肯定感を育みにくいHSC

HSCは病気でも障害でもないので、もちろん治療や矯正は必要ありません。しかし、保護者や先生の中には、敏感さを矯正して、たくましい子に育てなければと思う方も多く、HSPの先生も例外ではありません。HSC時代に敏感さを封じ込める経験をしてきたHSPは、よかれと思って、子どもに対してもその努力を求めてしまう傾向があるのです。周囲からそのような評価を受ける中で、HSCは自分の気質を肯定できなくなってしまいます。しかし、例えば「ささいな点が気になるところ」は、悪く言えば「気にしすぎ」、よく言えば「観察力がある」となり、伸ばすべきよさと捉えることができるのです。

多様性を尊重した学びが求められる時代に

子どもたちの資質・能力を育成するために、「個別最適な学び」と「協働的な学び」を一体的に充実させることが提起されました。真に個別最適を目指すのであれば、学習進度のみならず、気質の違いも考慮する必要があります。HSCはたとえ発言が少なくても、積極的に授業に参加していますが、それが評価されにくいという側面があります。自分の特性に合った方法で学習を進めることによって、さらによさを伸ばすことができるでしょう。また、様々な気質の子どもたちが存在するからこそ、協働することに大きな意義があると言えます。

目次
第1章 HSCってどんな子ども?
1 まずはHSCについて知ろう
(1)約5人に1人存在するHSP(HSC)
(2)病気や障害ではなく「気質」
(3)HSCかどうかを判断するには?
2 どのクラスにもいる「敏感な子」
(1)「内向型」と「外向型」
(2)内向型の中にもいる「敏感な子」
(3)ADHDやASDと混同されるケース
3 敏感さを生かした素晴らしい人生を
(1)HSPは「心のリーダー」
(2)誰でも発信力を持つ時代だからこそ求められる気質
(3)HSCを守り育てることは大人の使命

第2章 HSCが安心できるクラスとは
1 成長のためには、強すぎず弱すぎない適度な刺激が必要
(1)HSCと非HSCでは、同じ刺激でも受け取り方が違う
(2)HSCが最高のパフォーマンスを発揮する刺激の度合いとは
2 刺激にあふれた学校生活
(1)学校生活でHSCが受ける刺激とは
(2)「みんな仲良く」の呪縛
(3)集団の中のHSC
3 緊張やプレッシャーを乗り越えて
(1)みんなの前で発表する場面では
(2)きちんとやらなければというプレッシャー
(3)給食の時間に表れやすいSOS
(4)自分を客観視できるようなサポートを
4 居心地のよいクラスとは
(1)一人一人を見抜く力
(2)思いやりにあふれたクラス
(3)様々な気質の子どもたちが協力し合うクラス
(4)秩序が保たれたクラス
(5)HSCは「炭鉱のカナリア」

第3章 HSCのために教師ができること
1 この子がもしHSCだったらと想像してみる
(1)子どもたちの気質に目を向ける
(2)落ち着きのない子がいたら
(3)荒っぽい行動をする子がいたら
(4)身体面での敏感さを持つ子がいたら
2 HSCの自己肯定感を育むために
(1)自己肯定感を持ちにくいHSC
(2)タフでないと生きていけない?
(3)気質だけでは決まらない子どもの可能性
(4)力を発揮できるような環境づくり
3 教師がHSPであっても、非HSPであっても
(1)HSPの先生の強み・陥りやすい考え方
(2)非HSPの先生にとってのHSPやHSC
(3)気質の違いを生かした連携体制
(4)子どもを強く叱る必要はない
(5)子どもの理解者になる喜び

第4章 HSCがよりよく学ぶために
 1 もし授業に集中できなくなっていたら
(1)教室の環境が気になって、授業に集中できない場合
(2)気になることや心配事があって、授業に集中できない場合
2 内発的動機づけによって学習するHSC
(1)内発的動機づけと外発的動機づけ
(2)やる気をなくすごほうびがある?
3 評価すべきは表面的な態度ではない
(1)たとえ発表しなくても、積極的に参加しているHSC
(2)「主体的に学習に取り組む態度」をどう見取るか
4 「個別最適な学び」と「協働的な学び」
(1)HSCの気質を生かした学び方
(2)多様な子どもが協働する授業

第5章 HSCへの個別対応ケーススタディ
1 給食が食べられない、給食の時間が苦手
2 学校のトイレに行きづらい
3 休み時間は静かに過ごしたいのに……
4 急かされるのが苦手
5 他人の影響を受けやすい
6 いい子ぶっていると言われてしまう
7 相手を傷つけていないか心配……
8 先生の強い口調や暴言が怖い
9 頑張っていることが評価されにくい
10 先生に「困った子」扱いをされてしまう
著者プロフィール
杉本景子
1978年生まれ。公認心理師・看護師・保護司。NPO法人千葉こども家庭支援センター理事長。杉本景子公認心理師事務所主宰。千葉市スクールメディカルアドバイザー。元厚生労働技官(国立病院機構下総精神医療センター閉鎖病棟勤務)。
3人の子育てをしつつカウンセラーとして活動する中、学校生活に関する相談を多く受けたことから、子どもたちが安心して力を発揮できる環境づくりが必要だと痛感。家庭と学校の架け橋となるべくNPO法人を立ち上げ、不登校児童生徒をサポートするフリースクール「ペガサス」を千葉市に開設。
HSCとその保護者へのカウンセリングのほかに、教育委員会や学校現場にHSCへの理解を広めるための啓発活動を行う。NHK「おはよう日本」をはじめ、教育系雑誌や新聞など数多くのメディアにも取り上げられている。
主な著書に、『一生幸せなHSCの育て方―「気が付き過ぎる」子どもの日常・学校生活の「悩み」と「伸ばし方」を理解する』(時事通信社、2021)がある。