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個別最適な学びと協働的な学び

奈須 正裕/著


読者対象:小学校教員・中学校教員

出版年月:

ページ数:312

奈須正裕(上智大学教授) 待望の最新刊!
『個別最適な学びと協働的な学び』

奈須正裕教授の最新刊のテーマはずばり、「個別最適な学びと協働的な学び」!

本書のテーマである個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実は、中央教育審議会が2021年1月26日に公表した「『令和の日本型学校教育』の構築を目指して~全ての子供たちの可能性を引き出す、個別最適な学びと、協働的な学びの実現~(答申)」の中で提起したものです。

「各学校においては、教科等の特質に応じ、地域・学校や児童生徒の実情を踏まえながら、授業の中で『個別最適な学び』の成果を『協働的な学び』に生かし、更にその成果を『個別最適な学び』に還元するなど、『個別最適な学び』と『協働的な学び』を一体的に充実し、『主体的・対話的で深い学び』の実現に向けた授業改善につなげていくことが必要である」「目指すべき『令和の日本型学校教育』の姿を『全ての子供たちの可能性を引き出す、個別最適な学びと、協働的な学びの実現』とする。」(ともに19頁)

個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実は、一校のカリキュラムの中で、たとえばどのような姿として実現可能なのでしょうか。
本書では、学習指導要領改訂において重要な役割を担い、学校教育の課題に現場と協働して向き合い続ける奈須正裕教授(上智大学)が、長く伴走してきた山形県天童市立天童中部小学校の取組を起点にしながら考えていきます。

子どもがする授業

同校は、山形県天童市の中心部に位置する児童数670名ほどの大規模校です。通常の授業に相当する「仲間と教師で創る授業」に加え、「自学・自習」「マイプラン学習」「フリースタイルプロジェクト」という、子どもたちが自立的に学び進める三種類の学習に取り組んできました。

青空と学校

[自学・自習]
同校が最初に取り組んだのが協働的な学びとしての「自学・自習」でした。黒板の前に教師の姿はありません。タブレットを手に立っている女の子が今日の司会役で、同じく前に立っている二人の子どもが仲間の意見を板書にまとめ、授業のすべてを子どもたちの手で運営しているのです。同様の学習は奈良女子大学附属小学校などでも古くから実践されています。

[マイプラン学習]
「自学・自習」が協働的な学びであったのに対し、こちらは個別最適な学びになります。一般に「単元内自由進度学習」と呼ばれる学習方法で、オリジナルの実践は一九八〇年代に愛知県東浦町立緒川小学校で開発されました。一単元分の学習時間をまるごと子ども一人ひとりに委ね、各自が自分に最適だと考える学習計画を立案し、自らの判断と責任で自由に学んでいきます。

[フリースタイルプロジェクト]
どのように学ぶかという学習方法のみならず、何を学ぶか、つまり学習内容までも子どもに委ねてはどうか。このアイデアから生まれたのが「フリースタイルプロジェクト」です。このような趣旨の実践は古くからあり、大正時代にはすでに試みられています。さらに今日では、個々で探究課題を自由に設定する総合的な学習の時間、いわゆる「個人総合」として、どこの学校でも実践可能です。


子どもたちの姿から問われるもの

天童中部小に現出する学びの景色と子どもの姿は、すべての子どもは有能な学び手であり、適切な環境と出合いさえすれば、自ら進んで環境に関わり、その相互作用の中で自ら学びを進め、深めていく存在であることを証明しています。

そこから見えてくるのは、教師の都合とタイミングで教える授業から、子どもたちの都合とタイミングで学ぶ学習への転換です。このような学びに際し、多くの場合、教師は子どもの前に立ちません。ここで問われるのが、教師が果たすべき役割であり存在意義です。

本書では、数多くの実践を通して「有能な学び手としての子どもの姿」に基づいた時、立ち現れる「『教師の専門性』とは何であるのか」という問いに正体することを目的としています。
著者の解説のみならず、島根県立大学教授で算数教育の権威・齊藤一弥先生による同校での算数授業の実践報告や、座談会、若手教師へのインタビューなど、重層的なアプローチを試みます。

「個別最適な学びと協働的な学び」は、私たちの前に突然現れた学びではありません。その歴史的背景から伝統的系譜としてつむがれた最新の実践までを網羅した、必読の1冊の完成です。

  • [章立て]
  • 第1章 令和の日本型学校教育 
  • 第2章 子どもが自立的に学び進める学習
  • 第3章 近代学校の子ども観とその問い直し
  • 第4章 すべての子どもは有能な学び手
  • 第5章 子どもは一人ひとり違っている
  • 第6章 自己決定的学習と環境による教育
  • 第7章 ICTという新たな道具立てを得て
  • 第8章 教師の専門性を問い直す
  • [実践報告/寄稿]
  • [小学校国語] 「お気に入りの詩をさがそう! つくろう!」佐藤卓生(山形市立鈴川小学校教諭)
  • [小学校算数] 「割合としてみる」齊藤一弥(島根県立大学教授)
  • [小学校社会] 「単元で公正を考える」大谷敦司(山形県天童市立天童中部小学校長)
  • [座談会]
  • 「教師の専門性とは何か」大谷敦司×齊藤一弥×佐藤卓生×奈須正裕
  • [インタビュー]
  • 自分たちが取り組んできた個別最適な学びと協働的な学びについて、天童中部小学校若手教師4名に聞く。

有能な学び手としての子どもの姿から突きつけられたのは、
「教師は何のためにいるのか」という問いでした。

目次
第1章 令和の日本型学校教育 
第2章 子どもが自立的に学び進める学習
第3章 近代学校の子ども観とその問い直し 
第4章 すべての子どもは有能な学び手 
第5章 子どもは一人ひとり違っている 
第6章 自己決定的学習と環境による教育 
第7章 ICTという新たな道具立てを得て 
第8章 教師の専門性を問い直す 
著者プロフィール
【著者】奈須正裕
上智大学総合人間科学部教育学科教授
神奈川大学助教授、国立教育研究所教育方法研究室長、立教大学教授などを経て2005年より現職。 現行の学習指導要領等に関わっては、中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会、教育課程企画特別部会、総則・評価特別部会、幼児教育部会、中学校部会、生活・総合的な学習の時間ワーキンググループ、小学校におけるカリキュラム・マネジメントの在り方に関する検討会議、小学校段階における論理的思考力や創造性、問題解決能力等の育成とプログラミング教育に関する有識者会議、二〇二〇年代に向けた教育の情報化に関する懇談会等の委員として、重要な役割を担う。主著に『「資質・能力」と学びのメカニズム』(東洋館出版社)、『次代の学びを創る知恵とワザ』『「少ない時数で豊かに学ぶ」授業のつくり方』(ともに、ぎょうせい)など。