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小学校2年 イラストで見る全単元・全時間の授業のすべて 生活 板書シリーズ

田村 学/編著


読者対象:小学校教員

出版年月:

ページ数:204

「板書シリーズ 生活」の編著者である、國學院大學教授、前文部科学省視学官

田村学先生に「板書シリーズ 生活」の特徴や活用の仕方についてお話を伺いました。

生活科を子どもたちと一緒に楽しもう!

『楽しくなければ生活科ではない』ということはいつも考えておいたほうがいいと思います。子どもたちも生活科は大好きだし、とても人気がある時間だと思うのですが、この楽しい時間をやはり子どもと共に先生方にも楽しんで欲しいと思います。

今回の新学習指導要領の育成を目指す資質・能力の3つの柱には、①知識及び技能、②思考力、判断力、表現力等、③学びに向かう力、人間性等の3つがあります。どれも大事ですが、特に「思考力・判断力・表現力等」が存分に発揮できているような姿を目指していくべきではないかと思います。

生活科の成立の背景やこれまでの実践を見ると、活動や体験はかなり工夫がされてきました。ただ今後は一層、「表現活動」に力を入れることを意識してほしいと思います。そうすれば3つの資質・能力の育成にも向かい、生活科の存在価値や、実際に生活科で子どもが本当の学力といったものを獲得してくことに結び付けることができると思います。

子どもたちは生活科でいろいろなものに触れ、観察し、言葉や絵で表現していきます。対象を一体的に学ぶ傾向のある低学年の子どもたちは生活科の指導の中で、国語的な言葉を使った表現力や算数の数の概念等を学び取っていくのです。生活科は生活科だけに留まらず、他教科との関連的な指導、効果的な指導が可能で、子供たちの学びを豊かにすることができるのです。

同時に教科間という横のつながりだけでなく、縦のつながりも大事です。つまり幼児期で学んだことがいかに小学校の生活科に結び付くか、あるいは生活科で学んだことが3年生以降の学習にいかに発展していくかということです。
この横のつながりと縦のつながりを意識すると、結節点として生活科という教科が存在します。新学習指導要領では、低学年の教育がかなり大きくクローズアップされていると考える必要があるのではないかと思います。

「生活科からちょっと広がり過ぎちゃった」ではなく、「他教科にこんなに広がるんだ!」というように、先生も楽しんで子どもと一緒に取り組まれるといいと思います。

生活科の評価について

生活科の評価に関しては、平成元年の学習指導要領が告示されたときから3観点で進めてきているので、評価の観点自体にあまり変化はありません。ただこれまで以上に、「見えにくいものをいかに見取るか」ということが大事になってくると思います。

見えにくいものを見取るための方法として具体的には3つあります。
1つ目は、「空間軸でつなげて見取る」ということです。授業中の子どもの発言や書いた感想、つぶやきや表情など、子どもの様子から考えを見取るということです。

2つ目は、「時間軸でつなげて見取る」ということです。時間軸でつなぐというのは、日々の授業や活動の中での子どもの発言の変化や考え方の移り変わりを見取るということです。

3つ目は、「基準を定めて、それを基に見取る」ということがやはり必要だと思います。つまり子どもの姿をできるだけ丸々見取りたいとはいっても、やはり今日の授業ではこんな姿になってほしい、ここのところを具体的に描いてほしいなどの基準をイメージして、目の前の子どもとの違いを照らし合わせれば、「よしよし、いい感じだな」とか「いや、ちょっとまだかな」というところが見えてきます。

この「空間軸・時間軸・基準」の3つを教師が意識をして、授業の中の子どもの様子を見取ればおそらく今まで以上に子どもの姿がよく見えてきます。今まで何となくただ遊んでいるなと思っていた子が、「こんなふうに考えて遊んでるんだ」とか、「すごく工夫してるんだ。随分成長したな」というのが見えてきます。子どもたちの見えにくいものが見えてくると、おそらく授業に臨む教師の意識もより前向きになり、授業に取り組む楽しさを感じることができるのではないでしょうか。

「板書シリーズ 生活」の活用法

実際の生活科の授業が年間に小学校1年生は102時間、2年生は105時間あります。
ただ今回の「板書シリーズ」ではまずは単元や時間ではなく、1年間または2年間を俯瞰できるようにして、イメージと見通しを持っていただけるようにしました。

生活科という教科はほかの教科以上に地域性、あるいは学校の固有性が出やすい教科だと思います。地域の特徴によって、体験したり、出かけたりする場所や出会う人などに違いが出やすいからです。ただ、最初からオリジナルの単元をつくったり、学校の特徴を生かした独創的な教材を用意したりすることは、若い先生にとってはなかなか大変だと思います。この「板書シリーズ」にはいろいろ経験のある先生方の工夫・アイデアがたくさん詰まっていますから、それを参考に取り組み、そこに少しずつ独自性を入れるのが良いと思います。

これまで生活科は体験・活動が重視されてきましたが、前述したようにこれまで以上に「表現活動」に力を入れて頂きたいと思います。活動した後に表現したり、話し合ったりするような場面では、教師がどんな板書をするのかということが大事になってくると思います。低学年ですから、黒板全体から「ああ、なるほど」「今度はこういうことがしたいな」というように、大きくイメージとして捉えられるような構造化された板書がいいのではないかと思います。

さらに付属のDVDには授業で使える「学習カード」がワード形式で収録されています。大事なことは、そのカードを子どもがやらされて書くのではなく、自ら取り組もうと思って書くかです。

十分な体験があり、「自慢したい」「お家の人にも伝えたい」というような子どもの思いを大事にして、表現する場面を用意すれば、より一層学習効果は高まるでしょうし、子どもたちは学びを自分自身でつくっているという感覚も出てくると思います。子どもたちが自ら取り組むものとして、そのカードに向かっていけるような扱い方をしていただくといいと思います。

目次
本書活用のポイント 002
生活科における授業のポイント 007

1 まちの「すてき」たんけんをしよう 018
第1 時 1 年生の通学路探検を思い出そう 020
第2 時 もう一度、通学路探検をしてみよう 022
第3 時 気付いたこと、発見したことを話し合おう 024
第4 時 方面別グループで探検の計画を立てよう 026
第5 ・6 時 まち探検に出かけよう 028
第7 時 気になる!もっと知りたいを見付けたよ 030
第8 ・9 時 「気になる」「もっと知りたい」を調べに探検に行こう 032
第10時 まちの「すてき」を見付けたよ 034
第11時 まちの「すてき」をもっと見付けよう 036
第12・13時 まちの「すてき」探検をしよう 038
第14時 もっとまちの「すてき」を見付けたよ 040
第15時 まちの「すてき」No. 1 を伝えよう 042

2 やさいをそだてよう 044
第1 時 どんな野菜を育てようかな 046
第2 時 苗植えの準備をしよう 048
第3 時 苗を買いに行こう 050
第4 時 苗を植えよう 052
第5 時 野菜を観察しよう 054
第6 時 野菜のお世話をしよう 056
第7 時 野菜会議を開こう1 058
第8 時 野菜会議を開こう2 060
第9 時 野菜会議を開こう3 062
第10時 野菜を収穫しよう 064
第11・12時 野菜ピザをつくろう 066
第13時 野菜とお別れしよう 068
第14時 野菜のお世話を振り返ろう 070
第15時 野菜物語をまとめよう 072

3 生きものとなかよし 074
第1 時 生き物マップをつくろう 076
第2 ・3 時 生き物を見付けよう 078
第4 時 生き物のお家をつくろう 080
第5 ・6 時 生き物の喜ぶことをしよう 082
第7 時 生き物を観察しよう 084
第8 ・9 時 「わくわく生き物園」の準備をしよう 086
第10時 「わくわく生き物園」にお客さんを招待しよう 088
第11時 これからどうするかを考えよう 090
第12時 生き物からの贈り物 092

4 つくってあそぼう 094
第1 ・2 時 身近な物で遊ぼう 096
第3 時 動くおもちゃで遊ぼう 098
第4 時 動くおもちゃの材料を集めよう 100
第5 ・6 時 おもちゃをつくろう 102
第7 時 おもちゃをつくって気付いたことを伝え合おう 104
第8 ・9 時 もっとうまく動くように工夫しよう 106
第10・11時 友達とおもちゃで遊ぼう 108
第12時 おもちゃの遊びを広げよう 110
第13時 おもちゃ広場の準備をしよう 112
第14時 おもちゃ広場に招待しよう 114
第15時 楽しかったことを振り返ろう 116

5 幼稚園の友達と仲よくしよう 118
第1 時 おもちゃづくりを振り返ろう 120
第2 時 仲よし計画を立てよう1 122
第3 時 仲よし計画を立てよう2 124
第4 ・5 時 園の友達と遊ぼう(交流1) 126
第6 時 仲よくなれたかな~園の友達と遊ぼう~ 128
第7 時 園の友達に合わせておもちゃ広場を変身させよう 130
第8 ・9 時 おもちゃ広場に招待しよう(交流2) 132
第10時 仲よくなれたかな~おもちゃ広場~ 134
第11・12時 もっと仲よくなるための計画を立てよう 136
第13・14時 もっと仲よくなろう(交流3) 138
第15時 幼稚園の友達と仲よくなれたかな 140

6 図書館に出かけよう 142
第1 時 図書館ってどんなところ? 144
第2 時 学校の図書館を調べてみよう 146
第3 時 図書館に行く計画を立てよう 148
第4 ・5 時 図書館へ行ってみよう 150
第6 時 図書館で見付けたことを紹介しよう 152
第7 時 もっと図書館のことを知ろう 154
第8 ・9 時 図書館の人に教えてもらおう 156
第10時 図書館で教えてもらったことを思い出そう 158
第11・12時 「図書館のひみつ」をまとめよう 160
第13時 「図書館のひみつ」を聞いてもらおう 162
第14時 「図書館のひみつ」をパワーアップさせよう 164
第15時 たくさん図書館を使ってみたよ 166

7 こんなに大きくなったよ 168
第1 時 「ぼく・わたしの『すてき』」を発見しよう 170
第2 時 友達の「すてき」を発見しよう 172
第3 時 もっと「すてき」を発見しよう 174
第4 ・5 時 いろいろな人に聞いてみよう 176
第6 時 これまでの活動を振り返ろう 178
第7 時 「ぼく・わたしの『すてき』」をまとめよう 180
第8 ・9 時 「ぼく・わたしの『すてき物語』」をつくろう 182
第10時 「すてき物語」を紹介し合おう 184
第11時 「すてき物語」を発表しよう 186
第12時 発表会の準備をしよう 188
第13・14時 発表会を開こう 190
第15時 発表会を振り返ろう 192
第16時 「ありがとう」を伝えよう 194
第17時 もっともっと「すてき」なぼく・わたしに 196
第18時 3 年生へレッツ・ゴー! 198

編著者・執筆者一覧 200
著者プロフィール
田村学                                         國學院大學人間開発学部初等教育学科教授(文部科学省視学委員)
昭和37 年新潟県生まれ。新潟大学教育学部卒業後、昭和61 年4 月より新潟県公立小学校教諭、新潟県上越市立大手町小学校教諭、上越教育大学附属小学校教諭、新潟県柏崎市教育委員会指導主事を経て、文部科学省初等中等教育局教育課程課教科調査官・国立教育政策研究所教育課程研究センター研究開発部教育課程調査官。文部科学省初等中等教育局視学官として学習指導要領作成に携わる。平成29 年4 月より現職。主著に、『「探究」を探究する』(学事出版)、『「深い学び」を実現するカリキュラム・マネジメント』(文溪堂)、『問い、対話、振り返りによる中学校の授業改革』(小学館)、『授業を磨く』『カリキュラム・マネジメント入門』『深い学び』(いずれも東洋館出版社)など。[2021年現在]