「分けて比べる」道徳科授業
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ページ数:212
坂本哲彦の道徳授業の決定版!「分けて比べる」で道徳授業UDが深まる!!
落ちていた500円玉
ほとんどの子どもは、「交番に届ける」と答えることでしょう。
正直であることは大切です。よいと思ったことは進んで行うべきです。
そんなことは、授業を受ける前から子どもたちは知っています。
また、道徳の授業ではそれが「正答」だということも知っています。
だから、子どもたちは条件反射的に「交番に届ける」と答えるのです。
そして、教師は、
「そうですね。正直な心をもって、それを行動に移すことはすばらしいですね」
とまとめます。
こうして授業はスムーズに流れていきます。
しかし、そこには、「考え、議論する」余地はありません。
「考え、議論する」授業のためには?
「道に500円玉が落ちていました。そこを通りかかった教材文中のAくんは、どう思うでしょうか?」
この場合、子どもの反応は少し変わったものになるかもしれません。
もちろん、「交番に届ける」と答える子どももいるでしょうが、
「『もらっちゃおう』と思うかもしれない」
「『自分ではなく、ほかの誰かが交番に届けてくれないかな』と思うかもしれない」
「『交番まで行くのは面倒だから、見て見ぬふりをしよう』と思うかもしれない」
などの答えも出てくるかもしれません。
他者を通して語らせることで、多様な意見が出やすくなります。
多様な意見が出ることは、そのことについて話し合い、考えを深めていくことにつながっていきます。
その中には、
「今は『もらっちゃおう』と思っているけれど、これからは交番に届けられるようになってほしい」
と、「Aくん」を通して、自身のなりたい姿を述べる子どももいるかもしれません。
自分の内面を明かすのにためらいを覚えるようになってきた子どもたちには、有効な方法になりえます。
「分けて比べる」で道徳科授業が深まる
しかし、場合によっては、自分自身のこととは「分けて」考えを述べ、他者と「比べる」ことで理解が深まることも少なくありません。
- 道徳科の目標と内容を分けて比べる
- 授業のねらいと学習内容を分けて比べる
- 教材、発問、学習内容を分けて比べる
- 質の高い指導方法を分けて比べる
- 評価の内容と方法を分けて比べる
そしてそれは、すべての子どもが参加し、理解できる授業、すなわち「授業のユニバーサルデザイン」にもつながっていくのです。
道徳授業UDとの関連
『道徳授業のユニバーサルデザイン』(東洋館出版社、2014年)では、
- 焦点化
- 視覚化
- 共有化
- 身体表現化
しかし、「分けて比べる」ことは、道徳UDと深くかかわりはあるものの、5点目の要件ではありません。
上記の4要件を深めるための、横断的な観点と考えることが適切です。
「分けて比べる」道徳科授業で、子どもが本気で考え、本音で議論するようになる
第Ⅰ章 「分けて比べる」とは
一 「分けて比べる」
二 なぜ、「分けて比べる」のか
三 何を「分けて比べる」のか
第Ⅱ章 目標と内容を「分けて比べる」
一 道徳科の目標と内容項目
二 授業のねらいと学習内容
第Ⅲ章 教材、発問、学習過程を「分けて比べる」
一 教材
二 発問の機能
三 発問の種類
四 学習過程
第Ⅳ章 多様な指導方法を「分けて比べる」
一 質が高い多様な指導方法
二 読み物教材の登場人物への自我関与が中心の学習
~「なり切る自我関与」か「自分ならと考える自我関与」か~
三 問題解決的な学習
~「価値課題」か「教材課題(非価値課題)」か~
~「行為の解決」か「考え方の解決」か~
~「授業内追求」か「はみ出す追求」か~
四 道徳的な行為に関する体験的な学習
~「行為が目的」か「行為は手段」か~
~「行為は理解」か「行為は表現」か~
~「いじめ問題に活用する」か「控える」か~
第Ⅴ章 「分けて比べる」ことをUD化に生かす
一 道徳科授業のUDの四要件
二 各視点に「学びの困難さに対する工夫」を一層付加する
第Ⅵ章 評価に生かす「分けて比べる」
一 教師による子どもの評価
二 教師による授業の評価
三 教師による授業の評価と子どもの評価の関係
第Ⅶ章 「分けて比べる」授業例
一 内容項目の内容を分けて比べる
~小学校四年生 D19 生命の尊さ 「ヒキガエルとロバ」~
二 内容項目同士を分けて比べる
~小学校三年生 A1 善悪の判断、自律、自由と責任 「よわむし太郎」~
三 価値のよさを分けて比べる
~小学校二年生 C14 勤労、公共の精神 「森のゆうびんやさん」~
四 場面を選んで比べる
~小学校一年生 A3 節度、節制 「るっぺ どうしたの」~
五 価値実現の大小を分けて比べる
~小学校六年生 B11 相互理解、寛容 「ブランコ乗りとピエロ」~
六 発言内容を分けて比べる
~小学校五年生 B11 相互理解、寛容 「銀のしょく台」~
あとがき