算数・数学 授業研究ハンドブック
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出版年月:
ページ数:278
1.授業研究とは何か
授業研究は日本に起源をもつ、授業改善への営みです。現在は世界中から注目され、Lesson Study(Jyugyou kenkyuu)として、国際的な会議やワークショップ等で取り上げられています。
一方で、授業研究という用語に対しては誤解も少なくありません。そこで、改めて授業研究とは何かを明らかにしていきます。授業研究は、実態として「授業を研究する」という意味で用いられる場合があります。また、「研究授業」と同義と捉えられることもあります。
実は授業研究は、五つの要素から構成されています。「目標設定と実態把握及び計画立案」「学習指導案の検討と作成」「研究授業」「研究協議会」「反省・総括」です。研究授業は、授業研究の一要素。そして、これら五つの構成要素の一つひとつが大切となってきます。
授業研究は、単に指導技術の向上を目指して行われるものではありません。もちろん、研究授業の授業者として授業研究を経験すれば、教師としての授業力は明らかに向上します。しかし、それは結果であって目的ではありません。研究授業を経験した先生であれば、成果とともに次の課題を認識することと思います。その課題とは、単に指導技術に関することだけでなく、教材研究が不十分なこと、子どもを見る目が浅いことなど様々でしょう。そしてその課題に向けて新たな一歩を踏み出していくことが大事なのです。
この持続性こそ日本の授業研究の特徴であり、広くいえば教師文化の特徴です。授業研究は専門職としての教師の成長を支えているのです。
2.よりよい授業をするために
本書は、長年にわたり積み上げられてきた授業研究の実績を踏まえて、わが国の教師や研究者が考える授業研究の特徴や実際、また展望について、内側から描き出すことで授業研究についての関心をさらに高め、活性化することを目指して編纂されています。
第1部では、日本の算数・数学の授業研究の特徴を明記し、国際的な広まりの中での日本の授業研究の位置や貢献を述べています。
第2部では、日々の授業改善を目指して様々な校種、形態で取り組まれている授業研究の実際を紹介しています。授業研究に取り組んでいる当事者に何のために、何を大切にし、そして、どのような方法で授業研究を行っているのか、その実際をリアルなエピソードを含めながら詳述します。
第3部では、授業研究の最終局面である反省とまとめに焦点を当て、特に研究論文としてまとめることの意義と、その具体的な方法や工夫等を中心に授業研究の実際を取り上げています。
本書は大学、小・中・高校等、様々な立場の人の語りを軸にして構成していることから、これまで授業研究を行ってきた方が自分の実施している授業研究について確認したり、別の種類の授業研究から学んだり、一方で、授業研究にこれから取り組みたい方には多くの知識を得られるようにしています。
本書を通して「自分もそうだ」「そこに困っている」など共感できると同時に、同じ立場の人が具体的にどのようにしているかなど自分と関連づけ、参考にしていただけるのではないでしょうか。さらに、日本の授業研究の特徴を再認識し、授業研究を推進する一助となれば幸いです。