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知的障害教育におけるレッスン・スタディ

丹野 哲也・武富 博文/編著


読者対象:特別支援教育担当教員

出版年月:

ページ数:136

レッスン・スタディで知的障害教育の授業力向上!

本書の概要

子供たちがワクワクするような授業や、生き生きと取り組む学習活動を実現する鍵となるのは「レッスン・スタディ(授業研究)」である。本書では、解説編、実践編、資料編の三部構成で、知的障害教育における授業実践力向上の方策を提案する。

本書からわかること

子供も先生もワクワクする授業を!

多くの先生方はその職を志したときから、

「子供たちがワクワクするような授業をしたい」

「子供たちが生き生きと学習活動に取り組めるようにしたい」

と、ご自身が目指す理想の授業像をもち、実践力の向上に励まれていることと思います。
本書では、授業実践力の向上の鍵となる営みが「レッスン・スタディ(授業研究)」であると捉えています。

世界が注目するレッスン・スタディ(授業研究)

我が国で「授業研究」が日常的に行われていることは国際的に高い評価を受け、「レッスン・スタディ(lesson study)」として広がりを見せています。

これは、1995年実施のTIMSSにおいて我が国の成績が上位にあったことに海外の研究者が注目したからだといわれています。

好成績の背景には、教師の力量形成として「授業研究」が日常的に行われていることが指摘され、「レッスン・スタディ」として紹介されました。

実は、我が国はレッスン・スタディ(授業研究)の先進国なのです。

知的障害教育でのレッスン・スタディ(授業研究)

レッスン・スタディとして国際的に関心がもたれているのは、主に小・中学校における教科教育を対象としたものです。

一方,知的障害教育についてはどうでしょうか?

もちろん、知的障害教育の場においても授業研究は日々行われています。また、知的障害教育ではティーム・アプローチが主であるため、「授業研究」として意識されていなくても、教師同士の日常的な協働により授業が進められています。

しかしながら、残念なことに、授業研究に焦点を当てた分析的研究や実践研究が希少であるという状況にあります。

本書で提案するレッスン・スタディ(授業研究)

そこで本書では、知的障害教育におけるレッスン・スタディ(授業研究)の方策を三つの観点から整理しました。

まず第1部「解説編」では、授業研究の現状や課題、前提となる先行研究について整理しました。

続く第2部「実践編」では、「子供が変わる授業研究の実際」「新しい教育課題を解決するための授業研究」「子供から学ぶ、同僚から学ぶ、教師の成長と授業研究の活性化」の三つの柱から、全国の実践を15点紹介しています。

最後の第3部「資料編」では、中教審の最新の動向やICTの活用のアイデア、また、今後の展望についてまとめています。

カバーデザインが表すもの

カバーデザインにある画像は、本書を読む前の思考イメージを、不規則に置かれたアルファベットで表現したものです。

そして、裏面のデザインは読書後のイメージです。アルファベットが順番に並べられているように、レッスン・スタディ(授業研究)についても、どのように考えていけばよいのか、思考が整理されていくことを表しています。

お読みになった先生方にとって、本書がレッスン・スタディ(授業研究)に関する考え方を整理する一助になれば幸いです。

こんな先生におすすめ

・授業実践力を高めたい担任の先生

・よりよい授業研究や研修を行いたいと思っている研究主任などの先生

・授業研究を柱とした学校運営を行いたいと思っている管理職の先生

など、どの立場の先生方にもおすすめです。

目次
まえがき

特別寄稿
 資質・能力を基盤とした教育と授業研究:奈須正裕
 知的障害教育における授業研究への期待:大西孝志

解説編
 1 知的障害教育における授業研究の現状と課題
 2 「授業研究」に関わる国内外の研究動向(文献レビュー)
 3 より効果的にレッスン・スタディ(授業研究)を推進させるために
 4 各教科等を合わせた指導における授業研究で押さえておきたいこと
 5 知的障害教育におけるレッスン・スタディ(授業研究)の理論的アプローチ

実践編
 〔Part 1 子供が変わる授業研究の実際〕
 教科グループで取り組む「つけたい力」に基づく単元構想からの授業づくり~高等部家庭科「消費生活」の授業実践~
 「深い学び」を視点として、理解、構想、学習評価を段階的に進めた取り組み
 実施形態が異なる授業研究を組み合わせて、学習評価や授業改善の検討を連続的に行う取組~高等部数学科の実践を事例にして~
 生徒が主体的に「思考・判断・表現」する数学(図形)の授業づくり~「分かって動ける授業」から「考えて動く授業」へ~
 チェックシート・学校適応感尺度「アセス」の活用による社会性の育成を目指した授業研究~今の姿、不安や悩みへの寄り添いから始める社会性の育成~
 知的障害教育における自己選択・自己決定
 実践編Part 1の総括
 〔Part 2 新しい教育課題を解決するための授業研究〕
 ICTを活用した学習活動の充実に関する授業研究
 新しい教育開発に向けた校内研修会を通した授業研究~エージェンシーの発揮を目指した領域「私の時間」の新設を通して~
 特別支援学校(知的障害)におけるプロジェクト型学習の推進に関する研究~教育センターと学校が連携した取組の工夫~
 情報活用能力を発揮して、自己の生活行動を改善するための実践~職業・家庭科「働くってどんなこと」の単元を通して~
 「つけたい力」からデザインする単元計画・授業づくり~子供の「主体的な学びの姿」に焦点を当てて~
 実践編Part 2の総括
 〔Part 3 子供から学ぶ、同僚から学ぶ、教員の成長と授業研究の活性化〕
 特別支援学級と通常の学級の担任の学びをつなぐ校内研究~子供の姿に焦点を当てた授業研究の取組~
 教育委員会の研究指定における授業に関わる実際
 全員参加型の授業研究を実現するためのスクールプロジェクト~授業研究を中心に据えた学校組織づくり~
 授業研修としての「日々の授業改善協議」の取組~一人一人の授業力の向上を目指して~
 実践編Part 3の総括

資料編
 「授業研究」を実施する上で確認しておくべき特別支援学校学習指導要領の規定
 「通常の学級に在籍する障害のある児童生徒への支援の在り方に関する検討会議 報告」と知的障害教育におけるレッスン・スタディ
 デジタル端末等を活用した「授業研究」のアイデア
 近未来の「授業研究」への展望
著者プロフィール
丹野 哲也(たんの てつや)
東京都立多摩桜の丘学園統括校長、元文部科学省視学官

武富 博文(たけどみ ひろふみ)
神戸親和大学准教授、元文部科学省視学委員