社会科の「問題解決的な学習」とは何か
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ページ数:168
社会科の「問題解決的な学習」を解き明かす
本書の概要
「問題解決的な学習」は社会科学習の本質であるが、その解釈は多様である。では、異なる解釈の下、それぞれの理想像はいかなるものか。13名の研究者が「問題解決的な学習」という観点から社会科の過去を振り返り、現在を見つめ、未来を探っていく。
本書からわかること
「問題解決的な学習」は社会科の本質
1947年に我が国に社会科が誕生してから今日に至るまで、「問題解決的な学習」は常に大切にされてきた学習論です。社会科の本質と言っても過言ではないでしょう。
とはいえ(あるいは、「だからこそ」)、問題解決的な学習にはさまざまな理解や解釈があります。
では、そもそも問題解決的な学習とはどのようなものであり、その理想とすべき姿はどのように考えられるのでしょうか。
社会科の「問題解決的な学習」の〈過去〉
本書の第Ⅰ章は、学習指導要領における問題解決的な学習の位置づけを確認するところから始まります。
また、社会科教育史を振り返って、それは現行(平成29年告示)学習指導要領で突如現れたものではなく、社会科発足以来、常に重視されてきたことを理解していきます。
一方で、実践における学習過程の画一化などの課題も指摘します。
社会科の「問題解決的な学習」の〈現在〉
第Ⅱ章では、12名の研究者がそれぞれ考える問題解決的な学習の成果と課題、そして理想像を論じます。
多様な「問題解決的な学習」論が展開されていきますが、どの論考が最も参考になるでしょうか。
・社会や環境に関わる課題の解決志向型の社会科学習の提案:宮﨑沙織
・「知識の成長」を中核にした小学校社会科の授業デザイン:山田秀和
・かかわり合いを通して問題の本質に迫る子どもたち:真島聖子
・素直に質問して意見を言い合い助け合いながら成長する子供たちを育てる:溜池善裕
・問題解決的な学習に求める4つの観点:峯明秀
・子どもたちが地域のいまの「問題」から未来の「社会」を考える授業:福田喜彦
・持続可能な社会の実現を目指す地理授業:阪上弘彬
・中学校歴史教育における「問題解決的な学習」:外池智
・外部人材と子どもの協働的な関係構築を目指す熟議学習の展開:井上昌善
・地理的な見方・考え方に基づいた問題解決力の育成をめざして:金玹辰
・求められる「自分ごと」の歴史観への転換:須賀忠芳
・私的自治の担い手を育成する問題解決的な学習:小貫篤
社会科の「問題解決的な学習」の〈未来〉
第Ⅲ章では、前章までをふまえて、問題解決的な学習の今後を展望します。
指導計画、教材開発、「主体的・対話的で深い学び」との関連、社会参画、教員育成などをキーワードに、今後求められる社会科(≒問題解決的な学習)像を描きます。
問題解決的な学習の基本
本書の「あとがき」で編著者は次のように述べています。
問題解決的な学習の基本は「子ども一人ひとり」である。子ども一人ひとりの成長が教師の成長につながるという意識を、教師一人ひとりが持てるかどうかが、社会科の問題解決的な学習が発展する鍵となる。
問題解決的な学習を継続的に展開していくことで、子どもは成長していきます。
本書が、子どもが成長し続ける社会科の授業づくりの一助となることを願っています。
こんな先生におすすめ
社会科の本質について考えたい先生や、問題解決的な学習の多様な解釈について知りたい先生、「覚える社会科」から「考える社会科」への転換をめざす先生におすすめです。