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「思考ツール×ICT」で実現する探究的な学び

泰山 裕/編著


読者対象:中学校教員・ 小学校教員

出版年月:

ページ数:200

探究的な学びのための思考ツール活用法

本書の概要

「思考ツール×ICT」で探究的な学びを実現し、自ら考えることのできる子どもを育てる。そのために本書では思考ツールを15点、思考ツールを使った実践事例を42点紹介する。これらの思考ツールはダウンロード可能。すぐに取り組むことができる。

本書からわかること

「思考ツール」とは?

近年、「思考ツール」という言葉を見聞きする機会が増えました。
「学習指導要領解説 総合的な学習(/探究)の時間編」(小〜高)で思考ツールを知ったという先生方もいらっしゃるかもしれません。
思考ツールとは、その名のとおり「思考スキルの発揮を促すためのツール(道具)」で、「ベン図」や「クラゲチャート」、「フィッシュボーン図」などが知られています。

正しい活用法とは?

思考ツールはすでにさまざまな書籍や報告書などで実践例が紹介されています。
すでに授業で活用したことがある先生方もいらっしゃるのではないでしょうか。
その一方で、思考ツールの活用そのものが目的化してしまったり、使ってみたものの子どもの思考が深まらなかったりといった事態も生じているようです。
では、正しい思考ツールの活用法とはどのようなものでしょうか?

思考ツールはいつ使う?

たとえば、小学校の社会科で自分たちの住むまちと別のまちとを比較する授業があったとします。
ここで発揮が期待される思考スキルは「比較して考える」ことです。
それぞれの地域で独自に見られるものや両方に共通して見られるものを記入し、情報を整理していきます。
そこで使われるのが「ベン図」という思考ツールです。
つまり、この場合、課題の設定、情報の収集、整理・分析、まとめ・表現、という探究的な学びのプロセスのうち、「整理・分析」の場面で用います。

思考ツールは何のため?

ベン図に情報を分類できれば授業は終わり、というわけではありません。
「どこが違うのか」「共通点は何か」「そこから何が言えるのか」「どのような観点から比較したのか」などについて自分なりに考えたり、友達と議論したりしていくことが大切です。
思考ツールはあくまでツール(道具)です。道具自体は授業の目的ではありません。それを使っていかに考えを深めていくかが求められます。

思考ツールを使いこなす

そのほかにも、

「この授業ではどの思考ツールを使えばいい?」
「紙に書く場合とICTを使った場合とでは効果は変わる?」
「思考ツールも評価の対象になる?」

など、思考ツールに関する疑問は多々あることと思います。
本書をご一読いただければ、基礎・基本から実践、応用・発展まで、思考ツールへの理解を深めていただけることと思います。

こんな先生におすすめ

「思考ツールについて知りたい」
「思考ツールのよりよい使い方を知りたい」

はもとより、

「探究的な学びのためにどのようにICTを使うとよいか」
「思考力を深める授業とはどのようなものか」
「これから授業はどのように変わっていくか」

といった疑問を解くカギになる1冊です。

目次
まえがき

第章 これから目指す学びの形
 1 どのような資質・能力の育成を目指すか
 2 どのような授業の形を目指すか
 3 探究的な学びの基盤となる資質・能力を育む
 4 探究的な学びを実現する
 〔コラム〕学習の基盤となる情報活用能力と思考スキル・思考ツール

第章 「思考力」をどう捉えるか
 1 「思考力」とはどのような能力か
 2 「思考力」を育てる
 3 「思考ツール×ICT」で探究的な学びを実現する
 〔コラム〕思考スキルを方向づける思考態度

第章 思考ツール×ICTの使い方
 1 思考ツールをどのように活用するか
 2 思考ツールの活用をどのように評価するか
 3 思考ツール×ICT
 〔コラム〕シンキングツール?の広がり

第章 思考スキルを促す思考ツールの例
 1 「比較する」を支援する思考ツール ベン図
 2 「比較する・分類する」を支援する思考ツール 座標軸
 3 「分類する」を支援する思考ツール Yチャート,Xチャート
 4 「関係づける」を支援する思考ツール コンセプトマップ
 5 「関連づける」を支援する思考ツール 同心円チャート
 6 「広げてみる」を支援する思考ツール イメージマップ
 7 「順序立てる」を支援する思考ツール ステップチャート
 8 「理由づける」を支援する思考ツール クラゲチャート
 9 「理由づける」を支援する思考ツール フィッシュボーン図
 10 「多面的にみる」を支援する思考ツール くまで図(Y,Xチャート)
 11 「多面的にみる」を支援する思考ツール フィッシュボーン図
 12 「多面的にみる」を支援する思考ツール バタフライチャート
 13 「変化をとらえる」を支援する思考ツール プロットダイアグラム
 14 「構造化する」を支援する思考ツール ピラミッドチャート
 15 「具体化する・抽象化する」を支援する思考ツール ピラミッドチャート
 16 「評価する」を支援する思考ツール PMIシート
 17 「推論する」を支援する思考ツール キャンディチャート
 18 思考ツールでは支援しにくい思考スキル「変換する,応用する,要約する」
 〔コラム〕1人1台時代に求められるメテ?ィア・リテラシーと思考スキル
 〔コラム〕ICT×思考ツールの基盤となる能力

第章 思考ツール×ICTの実践例
 1 ベン図で特殊な四角形を分類する
 2 ベン図で共通する考え方を捉える
 3 ベン図で日本の産業の課題を比べる
 4 ベン図で比較し,特徴を明確にする
 5 座標軸で登場人物の気持ちの変化を読み取る
 6 Yチャートでキーワードや問いを分類する
 7 Yチャートで1年間の見通しを分類して捉える
 8 Xチャートで語彙を分類する
 9 Xチャートで集めた情報を分類する
 10 コンセプトマップで「疑問」と「関連する表現」をつなぐ
 11 同心円チャートで身近な学習と社会課題を関連づける
 12 イメージマップで作品のイメージを広げる
 13 イメージマップで学習活動の見通しを広げる
 14 イメージマップで市のイメージを広げる
 15 イメージマップで自分の考えを整理し,互いに関わり合う
 16 ステップチャートで物語のプロット構成を捉える
 17 ステップチャートで単元の学習計画を作成する
 18 ステップチャートで仮説を設定し,実験計画を立案する
 19 クラゲチャートで描写をもとに心情を捉える
 20 クラゲチャートで物語の伏線を理由づけて解釈する
 21 クラゲチャートで優先する条件とその理由を整理する
 22 くまで図で上位語と下位語の概念を捉える
 23 くまで図で物語のクライマックスに合うBGMを考える
 24 フィッシュボーン図でプロジェクトを多面的に検討する
 25 フィッシュボーン図で地域の特色を多面的に捉える
 26 バタフライチャートでテーマに対する多様な考えをまとめる
 27 バタフライチャートで「節度ある生活」について考える
 28 プロットダイアグラムで物語の構成の変化を整理する
 29 ピラミッドチャートで理由を構造化する
 30 ピラミッドチャートで仕事への思いと行動を構造化する
 31 ピラミッドチャートで文化の特徴を構造化して捉える
 32 ピラミッドチャートで自分の課題意識を構造化し,学習計画を立てる
 33 ピラミッドチャートで現代社会の課題を構造化する
 34 ピラミッドチャートで説明文を構造化し,筆者の考えの中心をつかむ
 35 ピラミッドチャートで情報をもとに推測する
 36 PMIシートで話し合いの仕方を評価し改善する
 37 イメージマップ,クラゲチャート,プロット図で思いを確かにする
 38 ピラミッドチャートとクラゲチャートで,探究課題を検討する
 39 クラゲチャートと座標軸で,自分の考えを理由づけ比較する
 40 思考ツールを児童自身が選択する
 41 選択した思考ツールで情報を整理する
 42 思考ツールを選択して災害対策を分類し,多面的に捉える
 〔コラム〕思考スキル・思考ツールは個人探究に必須のアイテム

参考文献一覧
あとがき
著者プロフィール
泰山 裕(たいざん ゆう)
鳴門教育大学大学院学校教育学研究科准教授
1984年生まれ。関西大学情報科学研究科博士課程後期修了,博士(情報学)。園田学園女子大学非常勤講師,鳴門教育大学大学院講師等を経て現職。日本教育メディア学会理事,日本教育工学協会常任理事など。
著書に『教育委員会・学校管理職のためのカリキュラム・マネジメント実現への戦略と実践』(共編著,ぎょうせい,2020年),『ICT活用の理論と実践』(分担執筆,北大路書房,2021年),『学級遊びで身に付くGoogle Workspace for Education』(共編著,東洋館出版社,2022年)など。