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学び続ける力と問題解決―シンキング・レンズ,シンキング・サイクル,そして探究へ

高橋 純/著


読者対象:小学校教員・中学校教員・高等学校教員

出版年月:

ページ数:156

1人1台端末時代の問題解決能力

問題解決能力は、能動的に学び続けることによって、実際に行動できるレベルにまで高めることができます。ICTの活用を前提としつつ、その最も基本的で、かつ汎用的な要素となるのが、本書で提案する「シンキング・サイクル」と「シンキング・レンズ」です。

最強の資質・能力とは「学び続ける力」である

子供たちに育むべきとされる資質・能力は数多く示されています。学習指導要領にある「思考力」「判断力」「表現力」をはじめ、いわゆる「○○力」として、中教審、有識者、OECDなどからも次々と生まれています。
しかし、生涯にわたって能動的に学び続けていけば、あらゆる「○○力」をそのつど身につけていくことができます。
よって、最強の資質・能力とは、自らをアップデートする力、すなわち「学び続ける力」と言うことができるでしょう。

基本となる学習過程「シンキング・サイクル」

1人1台端末が整備され、今後の学習においてはICTの活用が大前提となります。
クラウドの特性を十分に生かすことによって、個別最適な学びや協働的な学びが実現し、探究的な学びが加速します。
そこで、これからの時代に対応した学習過程として「シンキング・サイクル」(以下、「TC」)を提案します。すなわち、

課題の設定 → 情報の収集 → 整理・分析 → まとめ → 説明・発表

の五つのステップです。
「事実 → 考え」という流れを基本とし、適宜、ふり返りや評価を行っていきます。

A.課題の設定 B.情報の収集 C.整理・分析 D.まとめ E.説明・発表 各ステップごとにF.ふり返りや評価

基本となる見方・考え方「シンキング・レンズ」

学習指導要領のキーワードの一つに「見方・考え方」があります。
「どのような視点で物事を捉え、どのような考え方で思考していくのか」(学習指導要領解説総則編)、考えを深めるための手立てになります。
しかし、「その教科等ならではの物事を捉える視点や考え方」(同)ともあるように、各教科等の特性によって「見方・考え方」に関する内容や記述はそれぞれです。「見方」と「考え方」を一体としている教科もあれば、別個のものとしている教科もあります。
そこで、より汎用性が高く、教科を問わない基本的な「見方・考え方」を「シンキング・レンズ」(以下、「TL」)として提案します。すなわち、

・五感:視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚
・比較
・多面的・多角的

の三つです。
非常にシンプルですが、だからこそ、どの子供、どの場面でも使うことができます。

子供一人一人が問題解決をする授業

それでは、具体的に、TCとTLをどのように授業に取り入れればいいのでしょうか。
TCは「活動の道筋をつけるもの」、TLは「思考の道筋を編み出すもの」と整理してみます。
例えば、何かを調べる活動を行うとします。これはTCでいえば「情報の収集」にあたります。
その際、ただ漠然と観察するのではなく、視覚や聴覚(TLの「五感」)を使ったり、あるいは比べたりすること(TLの「比較」)で、より意識的な観察ができるようになります。
さらに、ICTを利活用したり、ペアやグループで協力し合ったりするなど、学習形態も工夫することで、子供たちの学びはより深いものになっていくことでしょう。

学び続ける子供

子供たちに汎用的な問題解決能力を育てたいと思っている先生方、能動的に学び続ける力について考えを深めたい先生方、授業でのより有効なICTの活用方法について知りたい先生方には、特におすすめです。
「シンキング・サイクル」と「シンキング・レンズ」、そしてICTを活用して、学び続ける子供を育ててみませんか。

目次
まえがき

章 生涯にわたって能動的に学び続ける力を支える問題解決能力
 1 生涯にわたって能動的に学び続ける力
 2 様々な資質・能力の育成の中核をなす「問題解決能力」
 3 学び方としての1人1台端末の活用
 4 学び方としてのクラウドの活用
 5 クラウドによる協働編集機能の活用の重要性
 6 過去の出来事から学ぶ未来への心構え
 7 一人一人の子供を主語にする
 8 個別最適な学びと協働的な学びを引き起こす端末の活用の例

章 指導技術向上のためのICT活用から,教育方法を支えるICT活用へ
 1 教員によるICT活用
 2 子供によるICT活用
 3 事例から学ぶ教育方法の必要性
 4 春日井市立藤山台小学校6年の久川慶貴級の2021年度の事例

章 教育方法に対する基礎的な理解
 1 学術的な理論とハウツーの間で
 2 学習目標,学習活動,学習内容
 3 コンピテンシー・ベースの学習指導へ
 4 資質・能力とは何か
 5 学習指導要領における「知識及び技能」
 6 学習指導要領における「思考力,判断力,表現力等」
 7 知識の理解の質
 8 育みたい資質・能力に対応した学習活動へ
 9 資質・能力のイメージと指導法
 10 端末を活用した学習

章 基本となる学習過程「シンキング・サイクル」
 1 学習過程とは何か
 2 学習指導要領解説における学習過程
 3 生涯にわたって生きて働く学習過程とは何か

章 基本となる見方・考え方「シンキング・レンズ」
 1 何を道筋に思考をするか??見方・考え方?
 2 見方・考え方を心から便利と思うために
 3 シンキング・レンズ

章 シンキング・サイクルの必要感の醸成と適用場面例
 1 授業での必要感の醸成からのシンキング・サイクルの導入
 2 教科等の学習におけるシンキング・サイクルの適用場面
 3 日常におけるシンキング・サイクルの適用場面

章 子供一人一人が問題解決をする授業づくり〜シンキング・サイクル×シンキング・レンズ×ICT〜
 1 シンキング・サイクル×シンキング・レンズで問題解決
 2 活用例
 3 シンキング・サイクル内に,さらに小さなシンキング・サイクルを自在に働かせる
 4 シンキング・サイクルを働かせるのは子供自身
 5 授業過程とシンキング・サイクル
 6 子供自身が繰り返し働かせ,鍛えていく
 7 思考ツールとの関係
 8 「考えるための技法」との関係
 9 学習の基盤となる資質・能力や情報活用能力との関係

終章 これからの資質・能力の育成
 1 学習指導の観点から見た資質・能力の分類と構造
 2 学び方の分類
 3 学び方と教室内で流通する学習情報の総量
 4 シンキング・サイクルの過去,現在,未来
 5 学力向上のみならず,成熟という軸の重要性
著者プロフィール
高橋 純(たかはし じゅん)
東京学芸大学教育学部教授.
1972年神奈川県生まれ.横浜国立大学大学院教育学研究科修士課程修了,富山大学大学院理工学研究科博士後期課程修了.博士(工学).富山大学人間発達科学部准教授等を経て,現職.
中央教育審議会(初等中等教育分科会:2019年〜,教員養成部会:2019年〜,「令和の日本型学校教育」を担う教師の在り方特別部会:2021年?,教員免許更新制小委員会:2021年?,基本問題小委員会:2021?),文部科学省(GIGAスクール構想に基づく1人1台端末の円滑な利活用に関する調査協力者会議:2021年?,GIGAスクール構想下での校務の情報化の在り方についての専門家会議:2021年?,教育データの利活用に関する有識者会議:2020年〜,学校施設の在り方に関する調査研究協力者会議 新しい時代の学校施設検討部会:2021年〜)等の委員を歴任.第17回日本教育工学会研究奨励賞受賞.日本教育工学協会会長,日本教育工学会理事,日本教育メディア学会理事など.
著書に,『教育方法とカリキュラム・マネジメント』(編著,学文社,2019年),『はじめての授業のデジタルトランスフォーメーション』(編著,東洋館出版社,2021年),『1人1台タブレットではじめる小学校ICTの授業づくり超入門!』(共編著,明治図書出版,2021年)等多数.