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できる教師の「対応力」 ―逆算思考で子どもが変わる―

大前 暁政/著


読者対象:小学校教員・中学校教員

出版年月:

ページ数:212

「子どものダメな行動に目を向けない! 未来のゴールに焦点化する! 
○未来のゴールからの逆算思考を! 未来のゴールはこうだから、今はこんなふうに歩んでいこう。 
×過去はこうだったから、今もこんなふうに歩んでいこう。
子どもは「途方もないゴール」を達成していく!

未来のゴールから考える

子どもが問題となる行動をとってしまったとき、どのような指導をするとよいでしょうか?
子どもへの対応には大きく次の3つのやり方があります。

「原因」に目を向け、原因を取り除く。
「目的」に目を向け、目的に合わせて対応する。
「未来のゴール」を意識させ、今の行動を考えさせる。

多くの場合、教師が問題に焦点化してしまい、その問題をなくすための対応をしています。現在の行動の修正に力を注ぎ、何とか、問題となる行動をなくせたとします。しかし、それだけのことです。このような方法で力を注いでも、大きな成果は出ないことが多々あるのです。だからこそ、教師の考え方を今こそ転換してほしいのです。

この3つのやり方のうち、がより効果的な対応になることが多いため、できるだけ優先順位をにもっていきたいのです。ゴールを意識させるには、「ゴールの設定」を行っていないといけません。また、教師もその子のゴールを知っておかないといけません。そこで学級経営が始まる4月には、一人一人の子に、各自のゴールを考えさせます。

「全てのことがうまくいったとして、どんな未来を描きたいですか」
「どんな自分、どんな生活、どんな環境になっていたらいいと思いますか」

ここでは、その子が心から達成したいと思えるゴールを描かせます。このとき、できるだけ遠くの未来のゴールを考えさせます。1年間担任するなら、1年後のゴールを描かせるのです。
このように未来のゴールに焦点化することで、ゴールから逆算した「現在あるべき自分の姿」が決まります。そして、「現在あるべき自分の姿」が決まると、それに伴って、考え方も変わります。考え方が変わると、行動も自然と変化するのです。

ゴールに向かって一緒に考える

1年後のゴールを描かせた際、ここで2つ注意すべきことがあります。

よりよいゴールを描くには「成功体験」の蓄積が必要になる。
ゴールは、できるだけ大きな理想を描かせる。

については、例えば、過去に失敗体験の多かった子がいるとします。失敗体験が多いほど、目標をなかなか描けません。描けても、「低いゴール」を描くので精一杯なこともあります。それは、自分自身への自己評価が低いからです。自信がないからです。そこで4月最初に、成功体験の蓄積が必要になります。やればできたとか、友達と協力して成果を出せたといった「成功体験」を、少しでも多く味わわせるのです。成功体験があるからこそ、自己評価が高まります。自己評価が高まると、「自分はもっとできるはずだ」と、「高いゴール」を描けるようになります。こうして、1年後の期待を大きく膨らませることができるのです。
をなぜ意識しないといけないかを説明します。現状維持で達成できるゴールであれば、わざわざ描く必要はありません。現状維持では無理だと思える理想を描かせることで、挑戦の必要が生まれ、より成長できるのです。

ゴールを共有したらやるべきこと

子どもがゴールを考えることができたら、教師もそのゴールを知るようにします。子ども一人一人のゴールは違いますから、日記や目標シートなどに書かせるとよいでしょう。
ゴールを共有したら、ゴール達成の手段を、子どもと一緒に考えていきます。例えば、「1年後に、仲間と協力しながら、楽しい日々を過ごしている」というゴールを描いたとします。そのゴールに到達するための手段を一緒に考えるのです。

子どもの1年後のゴール例

「友達のよいところに目を向ける」
「話し合いのときに、友達の話をしっかりと聞く」
「毎日、漢字や単語を練習して、1週間後にテストをする」

教師も、子どものゴールを知ることで、自然と、指導法が見えてきます。未来のゴールを知ることで、そのゴールに合致した手段に気付けるからです。はじめにゴールがあり、そして、現在あるべき自分の姿が決まります。そして、今やるべきことが見えてくるというわけです。

「よい人間関係」のゴールを子どもに教える

共同体感覚

人同士のつながりや、多くの人とつながって生きている自分を感じることであり、社会や学級、周りの友達、家族などの共同体を大切にする気持ちのこと。

学校では、「共同体感覚」を育てていかなくてはいけません。なぜなら、学級の雰囲気は、その学級に所属する子どもに大きな影響を与えているからです。教師が、「友達と助け合いなさい」と言ったとしても、競争的な雰囲気があるのであれば、その雰囲気に影響されてしまうのです。

一方、友達との協力や認め合う関係を大切にする学級だとどうでしょうか。この場合は、学級に「支持的な雰囲気」が生まれます。すると、相手を信じて任せたり、困ったときに助けを求めたりすることが、自然とできるようになります。相手もそれに応えてくれます。そして、「人同士のつながりや共同体を大切にしよう」という気持ちが自然と高まってくるのです。

共同体感覚を養うには、互いのよさを認め合う雰囲気の中で、信頼できる仲間と過ごす経験を通すことが絶対条件になります。誰かに言われて共同体感覚は養われないのです。体験こそが必要になるのです。「友達と一緒に何かを協力してやってよかった」「学級に所属していてよかった」。そういう体験を重ねられる学級にしていく必要があります。そうすれば自然と、「自分だけでなく、共同体を大切にしよう」と思えるようになるのです。

よい人間関係を築くポイント

共同体感覚を養うため、同年代と「よい人間関係を築く」ことは欠かせません。この「よい人間関係」を築く上で、重要なポイントは、次のことです。

POINT:「互いに」が成立するには、まず「自分が先に行う」ことが必要になる。

つまり、次のような力学が働くのです。

この図のように、「自分が先に行う」ことが大切になります。相手に尊重されたかったら、先に相手を尊重しないといけないのです。もちろん、6つ全てを実現するのは、一朝一夕にはできません。しかし大切なのは、ゴールを先に示すことです。同年代との「よい人間関係」とは何かを、先に示すのです。ゴールがはっきりしていることで、自然と、仲間への接し方を工夫するようになるからです。子ども自身が、「こういう人間関係を築けたらいい」というゴールを知っておかないといけないのです。

ゴールが理解できたら、現状を振り返るようになります。

・◯◯君とは、いつも言い合いになる。もっと◯◯君のよい行動に注目してみよう。
・人はそれぞれ人格が違っているのだから、自分と同じ考え方を求めるのは止めよう。

このように、頭が働き始めます。その結果、子どもの行動も変わっていくのです。

* * *

本書では、「子どもを自立に導くための対応方法」について、できるだけわかりやすく解説しています。自立の力や姿勢を身につけるには、「子どもの自己評価を高める」対応が、ポイントになります。子ども対応というと、「問題行動にどう上手く対応するか」を意味していると思われがちです。もちろんその意味もありますし、本書には、具体的な方法を示しています。
しかし、「問題行動への対応の仕方」だけを学べばよいかと言えば、それでは不十分なのです。子ども対応のゴールは、「自立」です。私たち教師は、「子どもを自立に導くための対応方法」を学ばないといけないのです。

本書には、そのために以下の考え・方法を提唱しています。

子ども対応の心構え
自立を促すための段階的指導
共同体感覚を養うための対応の原則
子どもにセルフコーチングの力をつける対応

新学期を迎えるにあたって、担任するクラスの子供への対応の仕方を見直し、よりよい学級をつくっていくため、本書を活用し、子どもたちに自立の力を身につけていく指導をしていきましょう。

子どもが前向きになるための「対応力」を学ぼう!

目次
はじめに 2

第1章 子ども対応の心構え

 学校の教師が考えなくてはならないのは「私に何ができるか」 12
 行動の目的にも目を向けることで、解決方法を生み出す 16
 子ども本人が目的を分かっていない場合がある 22
 未来のゴールから今の自分がどうしたらよいのかを考えさせる 26
 問題行動に焦点化するのではなく未来のゴールに焦点化する 30
 ゴールに向かって何をどう頑張ればよいのか一緒に考える 38

第2章 自立を促すための段階的指導

 自立を促すために何を育てる必要があるか 44
 子ども対応の出発点 50
 教師とは子どもの自己評価を高める人のこと 54
 努力と成長を実感できるシステムをつくる 60
 自立を目指した子ども対応の原則 66
 ティーチングからコーチングへ 70
 未来のゴールを示されるから子供は自分で判断しやすくなる 78
 手をかけ励まし続けることで、一人立ちの姿勢が身につく 82

第3章 共同体感覚を養うための対応の原則

 大切なのは他人を信頼できるということ 86
 信頼関係は、まずは他人を「知る」ことから始まる 90
 所属感、信頼感、貢献感の問題 96
 協力してよかった経験を通す 102
 それぞれの子のよさに目を向けさせるために 106
 「よい人間関係」のゴールを子どもに教えているか 112
 自分の課題と他者の課題を分離する 118
 教師こそが信頼されるように 122
 
第4章 子どもにセルフコーチングの力をつける対応
 
 未来のゴールから次の一歩を判断させる 128
 未来のゴールを描かせ、現在の自分をイメージさせる 134
 ゴールの達成手段を決め、毎日継続できたか振り返らせる 144
 「よい行い」のルーティンを考えさせる 152
 ゴールに近づけているかを定期的に振り返らせる 156
 軌道修正を一緒に考える 162
 新しい夢に向かってゴールを更新する 168

第5章 よくある子ども対応の間違い

 問題に焦点化してしまう 174
 その子以外の原因をなくそうとしない 180
 その子の自己評価を高めることを優先できない 184
 叱り方の原則がわかっていない 188
 最初に全体の雰囲気をつくらない 194
 同志同行と師弟関係を使い分けられていない 198
 自由な雰囲気をつくれず、管理に気を揉んでしまう 202

おわりに 206
引用・参考文献 208
著者プロフィール
京都文教大学准教授

岡山大学大学院教育学研究科(理科教育)修了後、公立小学校教諭を経て、2013 年4 月より現職。教員養成課程において、教育方法論や理科などの教職科目を担当。「どの子も可能性をもっており、可能性を引き出し伸ばすことが教師の仕事」ととらえ、現場と連携し新しい教育を生み出す研究を行っている。文部科学省委託体力アッププロジェクト委員、教育委員会要請の理科教育課程編成委員などを歴任。理科の授業研究が認められ「ソニー子ども科学教育プログラム」に入賞。主な著書に『勉強ができる!クラスのつくり方』『教師1年目の学級経営』(東洋館出版社)、『実践アクティブ・ラーニングまるわかり講座』(小学館)、『なぜクラス中がどんどん理科を得意になるのか』(教育出版)、『本当は大切だけど、誰も教えてくれない授業デザイン41のこと』『本当は大切だけど、誰も教えてくれない学級経営 42 のこと』『WHY でわかる! HOW でできる! 理科の授業Q&A』『プロ教師直伝!授業成功のゴールデンルール』『子どもを自立へ導く学級経営ピラミッド』(明治図書出版)など多数。