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中学校道徳科 ゼロからわかる授業づくり

藤永 啓吾/著


読者対象:中学校教員

出版年月:

ページ数:168

みるみる「生徒の反応」がよくなる 中学校道徳科の授業づくりのプロが問いづくり・板書・実際の授業を漫画付きで解説! 生徒と対話するポイントを提案

2019年度から教科化された中学校特別の教科 道徳は、各地で授業研究が盛んに行われています。山口大学附属光中学校を経て山口県の研究指導主事を務める藤永啓吾先生は、約750人が参加するLINEのオープンチャットを運営するなど、日夜研究を進めています。
本書では、『中学校学習指導要領解説 特別の教科 道徳』を丁寧に読み解き、授業づくりを「ねらいづくり」「問いづくり」「指導案、板書づくり」「道徳科の時間を豊かにする一手間(授業前後の関わり)」の4STEPに分けて解説するほか、「視点替え」や「リレー発表」などの授業モデルを5つ提案します。その中から、「役割演技」を紹介します。

まずは漫画をご覧ください。(漫画は左から右に読むコマ割りです。)

昨日のあのドラマ、観た?観た観た!演技すごかったよね〜。先生も見たよ!演技は心を表現するための最高の手段だよね…!先生目、真っ赤じゃん…じゃあ、来週は…道徳の授業で、役割演技をしてみよう!役割演技:複数の人で役を演じ、その疑似体験を通して、自己や他者の行動の在り方や考え方について、現実感を持って見つめたり、考え直したりする学習方法! え、演技なんて自信ないよ〜!ぶっちゃけちょっと恥ずかしいし…私はいつでもOKでーす!テーマは「きまり」閉園時間間際の動物園が舞台だ。シナリオ:動物園の閉園間際に、入園係のベテラン・元さんと同僚の前に姉弟が現れる。姉弟はよく園の外から中を眺めていたが、今日は姉がお金を握りしめている。閉園時間で入れないこと、保護者同伴でないといけないことを告げると、「弟の誕生日だから」と懇願される。姉弟を特別に入れたが、一時行方不明になり騒動になってしまう。元さんの元には姉弟の母からの感謝の手紙と、このトラブルの責任を問われた懲戒処分の計2通が届く。用意するもの:役名が分かる紙やペープサードなどがあると役に入りやすい。元さんは先生が行います。うーん…じゃあ、元さんの同僚をやってみよう。実際、姉弟を前にしたら、何が正解なんだろうな。私は、弟思いのお姉ちゃん!でも、ルールを前にして簡単に諦められるかなぁ。 見ているみんなは、演技をしている間は静かに。その後は考えたことを発表してください。今回はあなたが同僚だったらどうするか、を考えましょう。役割演技スタート!おじちゃん、何とか入れてくれませんか?今日はもう終わりなんだ。それに、保護者がいないと入れないよ。ごめんね。…今日は弟の誕生日なの。動物、見たいなぁ〜。…仕方ない。特別に入れてあげよう。大丈夫だよね?ありがとうございます!私たち。大丈夫です!元さん!ダメだよ。もう入園時間を過ぎている。けがをしたら取り返しがつかない。ここで断るのと、何かあってしまったときのどちらが”本当に悲しい”事になるか考えた方がいいよ!役割演技終了!はい、ストップ! では、今の演技を見てみんなは同僚の声かけや姉弟の気持ちについてどう思いましたか?最悪の事態を防ぐためという、同僚の意見は、結局は姉弟のことを考えていて元さんと気持ちは同じなんじゃないかな?演じてみて、子どもの願いを叶えてあげるというのは、何のトラブルもないことが前提だよね。その環境がつくれないなら、子どもたちだけでの入園は断腸の思いだけど断るべきだと思った。子どもたちだけで冷静な判断ができるとは思わないけれど、ベテラン係員の元さんが大丈夫と判断するのなら、特別に入れてあげることは、必ずしも悪いことではないんじゃないかな…いろいろな事情があるはずなのに全て決めたことだからOK/NGとなるのは悲しいね…きまりを決め直すことや、例外について、きまりをつくる側が考えておくことが、いろんな人の幸せにつながる気がした。実際に現場のやり取りをイメージして考えるのは大切だね。役者たちに拍手!私の役者デビューも近いわね!調子がいいんだから…

役割演技とは

現実の場面を想定し、テーマに基づいて複数の人がそれぞれの役を即興的(形にとらわれず思うままに)に演じる方法です。ロールプレイングとも呼ばれています。効果としては、自己や他者の行動の在り方、考え方等を、現実感を帯ながら見つめたり、考え直したりすることができます。

役割演技の特徴

中心となる問いを基に役割演技の場面を設け、様々な立ち位置を体験的及び客観的に捉えることで、自己の考えをより一層深めることができる。

授業の流れ(50分)

  1. ① ねらいに関わる子どもの認識を共有する(4分)
  2. ② 教材を読んで、感想を共有する(7分)
  3. ③ 中心的な問いを投げかけ、考え合う(6分)
  4. ④ 役割演技をする(10分)
  5. ⑤ 役割演技を通して感じたこと、考えたことの意見を共有する(8分)
  6. ⑥ 深める問いを投げかけ、考え合う(8分)
  7. ⑦ 考えを自己または人間としての生き方につなげる(7分)

◆ 教材
『二通の手紙』で実践(あらすじは漫画より)

◆ 導入
きまりの必要性を考えます。その後、意見交換の場面を設けます。

T: 「きまり」があることは、私たちの生活の中でどのように役立っているのかな?
C: 安心できる。
C: 嫌な思いをする人がいなくなる。
C: スポーツや社会が成立する。

◆ 展開1
教材を読み、元さんの心情を考えます。

T: 二通の手紙を見比べながら、元さんは何を考えていたのかな?(中心的な問い)
C: きまりを破ることがこんなにも大問題になるとは思わなかった。
C: ちょっとした自分の甘さが大問題になる可能性があると思った。
C: あの時、自分に他の選択肢はなかったのかな。
C: 自分勝手な行動で他人を傷つけずに済んでよかった。

◆ 展開2
役割演技を通して、更に考えを深めます。

もし、あなたが元さんの同僚だったら、元さんの姉弟に対する行為に対して、どのような行動をとるかな?
シナリオ-姉弟を園内に入れようとする元さんと園のきまりを遵守する同僚とのやりとり
視点-きまりの意義
分担①姉と弟、②同僚、③元さん(授業者が行います)

役割演技を基に、更に考えを深めます。
T: 園に残った同僚の佐々木さんが元さんから受け継いだ思いとはどんなものだと思う?(深める問い)
C: 何のためにきまりがあるのかをしっかりと考えてほしいという思い。
C: きまりを守るというのは動物園のことだけでなく、利用者の安全や安心をも守っているということ。

◆ 終末
学んだことをワークシートや道徳ノートに書きます。

T: 人はどうして多くの場面できまりをつくったり、守ろうとしたりするのだと思う?

板書例

テーマ「きまり」 「きまり」があること 安心できる 嫌な思いをする人が減る スポーツや社会が成立する 二通の手紙を見比べながら 通告書 感謝の手紙 他に選択肢はなかったのか どうして同僚に相談しなかったのか 大問題にならなくてよかった 子どもに怪我がなくてよかった 何のためにきまりがあるのかをしっかりと考えること きまりの重みや必要性 元さんから継いだ意思

評価のポイント

① 子どもの学習に関わる評価
自分たちの生活や権利を守るための「きまり」の大切さを再認識しようとする姿や、自分の生き方につなげて考えようとする姿、また、よりよい社会の実現に向けて考えようとする姿を積極的に探し、認めていくことが大切です。

② 授業者のための授業評価
法やきまりについて、単に守ることだけでなく、守ることの必要性や影響、つくったり変更したりすることの意義等の視点から捉え直し、自己の考えを広げたり、深めたりしようとしていたかを見取っていくことが大切です。


道徳科の授業づくりについての悩みの原因は3つに分かれるでしょう。

  • ① 「子どもの発達の段階」
  • ② 「教材内容の難易度が高い」
  • ③ 「一つの型に即して全ての授業を同じような流れでつくっている」

担任として受け持つ道徳科授業では、内面、外見の変化の多い中学生と持続的に関わっていく必要があります。
さまざまな授業スタイルを身に付けつつ、学習指導要領に準拠し、系統的に道徳科の授業をつくっていきたい先生にお勧めです。

目次
はじめに
第一章 道徳科の授業前におさえるポイント
1 変化の多い中学生の言動を「大人の姿」として向き合う
2 見たい子どもの姿をイメージする
3 学びの記録と今後の自分に向けた考え
4 授業者の動線を創る
5 学習環境を創る
6 範読を豊かに創る
7 最初の道徳科の時間を創る
8 反応、発表、対話の雰囲気は積極的な席替えで創る

第二章 授業実践
1役割演技
2リレー型授業
3視点変え授業
4ファシリテーション
5生活体験を生かして創る

第三章 よりよい授業のための4STEP 20ポイント
学習指導要領解説を基に、「学習内容」を設定した授業づくりのSTEP4
STEP1 ねらいづくり
① 教科書教材が示すキーワード(視点、内容項目)を確認する。
② 視点がもつねらいを捉える。
③ 内容項目の意義を捉える。
④ 内容項目を基に自分の考えや今まで学んできたことを振り返る。
⑤ 内容項目の概要からポイントを捉える。
⑥ 内容項目の指導の要点から子どもの実態を捉える。
⑦ 内容項目の指導の要点から教材を分析、吟味する。
⑧ 内容項目の指導の要点から「学習内容」を設定する。
⑨ 授業のねらいを設定する。
⑩ 主題名と学びのテーマを設定する。
STEP2 問いづくり
① 中心的な問いを創る。
② 中心的な問いに向かう導入時の問いを創る。
③ 中心的な問いを基に深い学びにつながる問いを創る。
④ 終末時の問いを創る。
STEP3 指導案、板書づくり
① 指導案を創る。
② 指導案を基に問い返しと学習活動を創る。
③ 指導案を基に板書を創る。
④ 授業評価の観点を創る。
STEP4 道徳の時間を豊かにする一手間
① 道徳の時間の前における子どもとの関わりを考える。
② 道徳の時間の後における子どもとの関わりを考える。

第四章 道徳推進教師
Key Word1 推進教師の仕事内容を知る
① 解説から確認する。
② 現場の現状から捉える。
Key Word2 校内研修を創る
① 体験的な学びを創る。
② 実践的な学びを創る。
Key Word3 特別支援教育と連携する
① 特別支援教育と道徳教育のつながりを捉える。
② 教育的支援を要する子どもの実態から道徳の時間を創る。
Key Word4 ICT教育と連携する
① ICTと道徳教育のつながりを捉える。
② 道徳の時間の中でICTの活用場面を考える。
Key Word5 小学校や高校と連携する
① 小学校や高等学校とつながる―子ども同士がつながる場を創る―
② 小学校や高等学校とつながる―小学校や高等学校とのつながりを捉える―
著者プロフィール
山口大学教育学部附属光中学校教諭
文部科学大臣優秀教職員表彰受賞-学習・道徳-(文部科学省)、「特別の教科 道徳」学びの会代表、LINEオープンチャット「道徳&学級運営LABO」代表、日本道徳教育学会等学会員、教科書編集員、『中学校板書で見る 全時間の授業 特別の教科 道徳』『ゼロからわかる授業づくり』(東洋館出版社)『道徳教育』(明治図書)など多数執筆。小・中学校の道徳科授業を多彩に創り、全国各地の講演講師を担いながら楽しく提案している。